子の引渡しの強制執行は子どもファーストでー法務委員会・参考人招致ー

子の引渡しの強制執行で子どもの意思を尊重できるか、専門家に聞きました。

<議事録>

○石井苗子君 日本維新の会・希望の党の石井苗子です。
今回の改正は大変な専門用語が飛び交っているんでございますけれども、よく読むと自分たちに密接に関係しているという改正になりまして、大体、債権者、債務者というのは、債権者の方はほぼ一般的にお金を貸している方、債務者というのは借りている方、借金している方ですよね、そういうふうに考えると非常にすらすら読めるんですね。裁判になると、前者が原告で後者が被告かというように読んでいくとすらすら頭に入ってくるんですけれども、私が読まさせていただきましたこの分厚い調査室がお作りになりました内閣提出第二十八号の十九ページ、債務者以外の第三者からの債務者財産の情報取得手続、ここでございますけれども、まず、素人感から行きますと、債務者以外の第三者というのは誰のことでございますか、教えてください。

○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
この法律案でおきますこの第三者でございますが、典型的には、例えば銀行でございます。あるいは登記所ですとか、あるいは市町村といったものが今回の情報提供制度の対象になるものでございます。

○石井苗子君 ということは、債権者のことではなくて、銀行とか登記所とか市町村のことということでよろしいんですね。はい、いいです、そうでよろしいんでしたらいいです。ということは、ともあれ、新法案で債務者以外の第三者からの情報取得手続が新設されましたと書いてあると、今おっしゃったような銀行とか市町村とかということになります。
預貯金の債権に関して聞きたいんですけれども、債権者からの申立てに当たって、これまでは銀行名と店舗名まで特定する必要がありました、これ。強制執行する場合に、その債務者の預貯金を正確に把握していない債権者の負担を軽減する、これ大切なことだと思うんですが、銀行名だけ特定して申立てすることは現在できないのでしょうか。お願いします。

○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
自分が判決で得た、認められた債権を取り立てるということで、預貯金債権を差し押さえるということが強制執行として行われるわけでございますけれども、現在の執行実務では、この預貯金債権に対する差押命令の申立てをするためには、その差押命令の対象となる預貯金債権の取扱店舗を具体的に特定しなければならない、そういうふうにされております。

○石井苗子君 法務大臣にお伺いします。
新しい制度となる債務者以外の第三者からの情報の収集の手続においては、銀行名だけで申立てすることができるようになれば、今の御説明よく分かるんですけれども、債権者の負担というのを軽減できると思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず、差押えの場面については、先ほど局長が申し上げたとおりでございます。そして、差押えの前提として、じゃ、どこの銀行のどの支店に預貯金債権があるのだということを知っていなければ、その差押えの申立てができない。ところが、これまではその債務者本人がここにありますという情報を開示しない限り、あるいは債権者自身が知らない限りはそれを調べる手段がなかなかなかったわけでございます。
今回の法律において、銀行に対して、銀行を特定するだけでその情報開示をしてもらうことができるという意味において、その情報開示を申し立てる段階では銀行だけ特定すれば銀行が調べてくれて、ここの支店にありますというふうに情報開示をしてくれます。そして、第二段階の差押えの場面においてはその情報を利用して差し押さえるというようなことをするということで、債権者の執行の効率が高まる、実効性が高まるというふうに考えております。

○石井苗子君 分かりました。ということは、銀行名だけでできることになるんですね。分かりました。ありがとうございます。書いていなかったものですから。
では、次の質問は、不動産競売における暴力団員の買受け防止方策というところで、ここも恐らく関係ないかなと思って読んでいたら、関係あるんですね。
改正案六十八条の四の一項、これは、執行裁判所は最高価買受申出人が暴力団かどうかと書いてありますけれども、二項は、この最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者が暴力団であるか、ということは、これはつまり、裏で操っている人が暴力団かどうかというようなことだと思うんです。まず、その理解が正しいかどうか。
で、その必要な調査を都道府県警察に嘱託しなければならないというふうに書いてあります。しかしながら、ここがややこしいんですが、最高裁判所規則に定める場合はこの限りではない。大変ややこしくて分からなくなるんですが、全ての最高価買受申出人や買受けの届出をさせた者が暴力団員でないと確認するというのはかなり、これは私の考えです、かなり大変で、もう本当に時間はすごく掛かるし無理なんではないかと、もしそういうことに関わりあった場合ですね。そうすると、最高裁判所規則で定められる場合とはどのような場合を想定しておっしゃっているのかということを参考人の方、分かりやすく説明してください。

○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
まず、御指摘の六十八条の四の二項の「自己の計算において最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者」というところでございますが、これは典型的には、自分が資金を出して、ある者にその自分の資金で言わば買受けを指示させたと、そういった場合がこの自己の計算において買受けの申出をさせた者に当たります。ですから、そういった資金を出している者が暴力団員等である場合もやはり同様に買受けの制限が掛かるということでございます。
そして、次に御指摘の「最高裁判所規則で定める場合」というものでございますけれども、これは例えば、最高価買受申出人が宅地建物取引業者である場合でございまして、これは宅地建物取引業者ということになりますと、法令上、暴力団員でないこと等が免許等の要件とされております。したがいまして、そういうものである場合には執行裁判所から都道府県警察への調査の嘱託をする必要がないとの指摘がされているものでございます。
こういったような議論を参考に最高裁判所規則において適切な規定が設けられるものと承知しております。

○石井苗子君 頭の中では分かりました。
あと、時間が二分ですよね。
では、ちょっと飛ばしまして、身近なところで、子供の引渡しについてなんですが、よく読んでいると、国内の子の強制執行に関する法律の明確化というところですけれども、父親と暮らしている場合で母親が引き渡せという審判があった場合、債務名義の場合は、夫は妻に引き渡せという審判を出すときに当然そこに子供の意思があるはずなんですね。家事審判法にもそう書いてあります。
実際の審判の場面で、これどういうふうに子供の気持ちというのを酌み取っているのか。国内の中の子の強制執行に関する手続での子供の意思は裁判所の判断に十分反映されている必要があると思われますけれども、家裁の手続ではどのようにして子供の意思を確認しているのか、ここだけ教えてください。

○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
家事事件手続法では、子の引渡しなど子をめぐる紛争においては、「子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。」と規定をしております。家庭裁判所におきましては、事案に応じまして、家庭裁判所調査官が心理学、教育学等の行動科学の専門的知見及び技法を用いて行う事実の調査を活用するなどいたしまして、子の意思を適切に把握し、十分に考慮をしているものというふうに承知しております。
具体的に申しますと、家庭裁判所調査官は、子の意思を把握するために、事案に応じて、子や父母と面接をしたり、子のふだんの様子を見ている保育所等の職員や親族等の陳述を聴取するなどいたしまして、子を取り巻く事情等を十分に把握をした上で子の意思を把握するように努めているところでございます。
家庭裁判所が子の引渡しについて判断するに当たりましては、このような調査の結果なども踏まえまして、子の意思を適切に考慮しているものと承知しております。

○石井苗子君 どんな専門家なのか、次のときに詳しく聞かせていただきます。
質問を終わります。ありがとうございました。

○石井苗子君 ありがとうございます。
お三方には大変参考になる御所見をいただきまして、ありがとうございます。
今日は朝からずっと法務委員会をやっておりまして、私、後半に入ってきますと、質問しようかと思っていたことがだんだん変わってきてしまうという現象を招いておりますけれども。
大まかな感想から言いますと、この昼休みに、私、フランスの方とずっと会っていたんですけれども、彼らの考えなんかを聞いていますと、日本というのは非常に子供の人権に対して国家的な認識が低いという感じがします。先ほど午前中にも、法務大臣がいろいろな質問に御答弁されていたんですけれども、それは個々の、個々のという、家庭の、家庭のという、どうしても家庭任せになってきてしまいまして、子供の犠牲は親のせいだというように、まるでそんなことを言っているようにも聞こえてくるんですね。養育費を払う、払わないという質問をしても、だから離婚しない方がいいんじゃないかというような、そういうふうにも聞こえてくるんですね。
何というか、子供をとにかく、子供の人権や権利を、まあ親が離婚するのは親の勝手だから、先に持っていくことはできないのかというのがありまして、私は先ほどから、大人が子供のために動かなければならないのだということをおっしゃった参考人の方がいるので、そのとおりだと思うんです。
やっぱり、請求権もないしということになれば、子供は子供なりに考えることができるんだと。親がいつも指導しなくてもいい。あのお父さんには会いたくない、もうこのお母さんとは暮らしたくないと言うかもしれませんが、それは子供をちゃんと導いていないからそういうことになるんだと、これは個人的な意見なんですけれども。
そこで、面会交流ということですが、ここに持ってきて、私の個人的な経験なので参考になるかどうか分からないんですけど、ビジネスの契約だと契約をつくっていくのに順番があるんです。この件に関しては九十日以内に決めなさい、この件に関しては一年以内に決めなさいというのがあるんですが、離婚に関しても、全ての財産から何から全部決まってから子供のことを決めるんじゃなくて、一番最初にその面会交流ということを、質問する対象が違うのかもしれませんが、例えば九十日間面会交流を拒否している人は、もうこれは子供の人権を無視していることになるので、それこそ罰則だったり、とにかく会わせなきゃいけないのだと、両方平等にというルールメーキングをしていくことで何か変わるとお考えでしょうか。
お三方にお聞きしたいんですが、それぞれの見地からお願いします。

○石井苗子君 ありがとうございます。大変参考になりました。
具体的な案がなくて抽象的だとおっしゃいましたけれども、具体的な法整備必要だと思います。お金があるから解決するという問題でもないし、誰の権利なんだというと子供の権利なわけですね。その親権の問題からいくと、今の伊藤参考人のお話のように、そんなボランティアのようなことで御苦労を重ねることに依存するということでは、これはやっぱり子供は国の財産だというふうに考えてないと私は思うので、法整備で、民事執行法の中の運用法とか、その辺で考えていけば一歩打開策があるんじゃないかと思うんですけれども。
まだちょっと時間がありますが、今度子供ちょっと外れまして、松下参考人にお伺いしますけれども、今回の民事執行法改正で債務者財産の開示の実効性を向上させることを目指しているんですけれども、先ほども質問があったと思うんですが、もう一回確認させてください。債権者が開示で得た情報をほかに流用する危険性があると思うんですけど、これ審議会でどのような意見が出たかというのを教えてください。

○石井苗子君 危険性については、具体的なこういう危険性があるというのはありますか。

○石井苗子君 分かりました。ありがとうございます。
それでは、伊藤参考人にお伺いします。
先ほどから、家庭裁判所の調査官でいらしたということで、大変御活躍されていた御経験話、具体的にこういうことを聞くことが少ないものですから大変有り難かったと思うんですけれども、御自身から、午前中に、我々といいますか私どもの党からの質問なんですが、共同親権についてなんですけれども、共同親権が例えば認められるようになった場合、子供の最善の利益にとって好ましいことかどうかなんですね。これは、御自身はどのようにお考えですか。

○石井苗子君 ありがとうございました。
もうちょっと時間がありますので、今の件につきまして、同じことで、ちょっと意見が違うんじゃないかなと思われるのでお聞きしたいんですけれども、松下参考人は、この共同親権が認められるようになった場合、子供の最善の利益にとって好ましいと言えるかどうかという点について御意見ください。

○石井苗子君 私も、やはり国として子供の人権というのを真っ先に、子供を先に考えられないのかというのをずっと思っているのですが、その点の発想の転換からいけば共同親権というのがいいと思うんですけれども、それでは最後に今津参考人にお伺いします。
論文を拝読させていただきまして、今津参考人が論文に書いていらっしゃいました家庭裁判所の後見的な役割についてなんですが、つまり積極的に家族に介入するという役割についてです。
当事者の考え方や主体性を尊重することと介入していくことというのは、抽象的な質問かもしれません、どっかで両立させなきゃいけないと思うんですけれども、その両立というのはどの辺に考えていらっしゃる、両立点というのはどこら辺に考えていらっしゃいますか。

○石井苗子君 これからも子供ファーストで考えていきたいと思います。よろしくお願いします。
ありがとうございました。

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